映画『ラ・マンチャの男』と神様のまなざし、言葉の力
先日、「世界名作劇場」完結版の2作のDVDと一緒に、
なぜか、この『ラ・マンチャの男』も借りてしまいました。
私自身、この映画は、20年くらい前、レーザーディスクで(死語の世界・・・)、
一度観たことはありますが、内容の方はだいたい忘れてしまいました。
主題歌の「見果てぬ夢」は、
確か最近、フィギュアスケートで誰かが使っていたと思います。
そういう事で、この映画を妻に紹介したく思って借りました。
映画は、原作並みに、複雑な構造です。
映画⇒セルバンテス⇒獄中の劇⇒アロンソ・キハーナがドン・キホーテになる、
という4重、5重構造・・・
俳優で言えば、
ピーター・オトゥールが映画の中でセルバンテスを演じ、
映画中のセルバンテスが、獄中で解説をしながらドン・キホーテを演じ、
ドン・キホーテは、アロンソ・キハーナという老人の妄想の産物・・・
すごい入れ子構造なのです。
(原作の構造の解説は、以下のサイトが、わかりやすく説明しています。)
「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる。
~「ドン・キホーテ」はスゴ本」
http://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2010/02/post-279f.html
構造の問題はさておき、この映画、
最初の方からドン・キホーテが風車に向かっていくエピソードが出てきます。
どうみても、宿屋にしか見えないものが、お城になったり、
奇妙奇天烈なエピソードが出てきます。
中でも、一番強烈なのが、娼婦アルドンサを、
貴婦人にふさわしい「ドルシネア」と呼びかけるところでしょう。
「清らかな処女よ!」なんていうところは、最初はかなりおかしかったです。
しかし、妄想する老人をあざ笑うのが、この映画の主題ではありません。
どれだけ嘲られても、夢や理想を失わないこと、
信念をしっかり持つことが主題なのでしょう。
「見果てぬ夢」が歌われるところは、大変感動します。
ドン・キホーテは、キリストのパロディなのではないか、
そんな風にさえ思えます。
思えば、聖書において、
イエス様は、漁師シモンを、「ペトロ(岩)」と呼ばれました。
イエス様が捕らえられた時に、裏切ってしまうような人物に・・・
しかし、聖霊降臨後のペトロは、確かに「岩」のような人となりました。
旧約聖書においても、臆病者のギデオンに、
主の御使いは、「勇者よ」(士師記6:12新共同訳)と呼びかけました。
その後、そのとおり、ギデオンは勇者として歩みました。
言葉の力というのは、実に大きいものですね。
そして、ドン・キホーテが娼婦アルドンサを「ドルシネア」として見るまなざし・・・
これは、まさに、神様が私達を見るまなざしのようです。
「わたしの目には、あなたは高価で尊い。
わたしはあなたを愛している。」
(旧約聖書 イザヤ書43:4新改訳)
仏教で言えば、法華経の「常不軽菩薩」のエピソードを連想させます。
人の悪にではなく、奥底にある清らかな存在を認めることから、
人間にとって最もすばらしい「神性」は花開きます。
映画において、娼婦アルドンサの変化は印象深いです。
(ソフィア・ローレンの名演ですね。)
どれだけ汚されても、「ドルシネア」の名にふさわしい人になることを忘れず、
ついに名と実が一致するところまでいきます。
映画とはいえ、感動的でした。
映画の一番感動なのは、ドン・キホーテがアルドンサ(ドルシネア)の前で、
主題歌である「見果てぬ夢」を歌うところでした。
思わず、少し目頭が熱くなりました・・・
自分に対しても、人に対しても、
常に肯定的なイメージの言葉を使いたいものですね。
そして、人の欠点よりも、長所を見たいものです。
本来、私達は皆、神様から愛されている、「神の子」なのですから・・・
「神は、実に、そのひとり子をお与えになったほどに、世を愛された。
それはひとり子を信じる者が、ひとりとして滅びることなく、
永遠のいのちを持つためである。」
(新約聖書 ヨハネの福音書3:16新改訳)
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販売元:20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン |
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