NHK・ギフト~E名言の世界~第5回「勇気」
The weak can never forgive.
Forgiveness is the attribute of the strong.
弱い者は人を許すことができません。許すということは強さの証しなのです。
マハトマ・ガンジー(インドの宗教家・独立運動指導者 1869-1948)
NHKの語学番組「ギフト~E名言の世界~」の第5回、
「勇気」で紹介された、ガンジーの名言です。
(上記引用は、番組HPから引用しました。)
http://www.nhk.or.jp/gogaku/english/gift/index.html
語学番組、というには惜しいほど、教養と含蓄あふれる番組となっています。
短時間の番組ながら、著名人の生きざまが要点をついてまとめられており、
なおかつ、英語と日本語で名言を楽しむことができます。
また、講師のロジャー・パルバース(Roger Pulvers)さんと、
紺野美沙子さんとの英語での話も興味深いです。
名言が喜ばれる文化、教養が尊ばれる文化、というのが復権するといいですね。
ところで、冒頭のガンジーの言葉は、
「悪人に手向かってはならない。
だれかがあなたの右の頬を打つなら、左の頬をも向けなさい。」
(マタイ5:39新共同訳)や、
「敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りなさい。」
(マタイ5:44新共同訳)、
「七の七十倍までも赦しなさい。」(マタイ18:22新共同訳)
といった福音書のイエス様の言葉が背景にあると思います。
ガンジーは、マタイ福音書の「山上の垂訓」(マタイ5~7章)に大きな影響を受けた、
と自伝の中で語っています。
ただ、当の「クリスチャン」と呼ばれる人たちが、
全然イエスの教えを守っていないことに失望して、
クリスチャンにはならなかった、とも語っています。
皮肉にも、歴史上の偉大な人物で、
本格的にイエス様の教えを文字通り実践したのは、
ヒンズー教徒のガンジーだった、といえましょう。
仏教学者のひろさちや氏の『空海入門』では、
「宗教の歴史における二人の『超人』」という見出しで、
次のような文章があります。
ガンジーと空海について語ったものです。
わたしはときどき、宗教の歴史における「超人」の役割を考えることがある。
宗教の歴史のなかには、まず「超越者」がいる。これは、釈尊やイエス・キリストのような存在であって、ちょっと「人間」とは呼びにくい。したがって、「超人」ではない。「超越者」は、わたしたちに道を教えてくれたのである。「左に行け!」「北へ進め!」と、われらが進む方向を指示してくれた。
しかし、実際には、それらの道にはさまざまな障害がある。歩けないわけではないが――ーわれわれが必ず歩けるから、「超越者」はその道を指示されたのであるが――ー、実際にその道を歩きおおせるには勇気がいる。たいていの人間が途中でへたばるか、引っ返してくる。
けれども、誰かがその道を歩いてくれると、あとは楽に歩けるのだ。
別段、道に障害物がなくなったわけではない。距離が短くなったのでもない。それなのに、その道を歩いた人がいるというだけで、ずっと楽に歩けるようになるのである。
たとえば、山登りがそうだろう。
誰かがマナスルを征服すると、とたんにマナスルが平凡な山になってしまう。
百メートル競走だって、そうらしい。十秒の壁は絶対に破れない、と言われていたのに、一度破られると、その壁はなくなってしまうのだ。
不思議である。
それと同じく、「超越者」の示した峻険な道も、誰かがそれを踏破することによって、ぐっと歩きやすくなる。そして、その最初に踏破した人間を、わたしは「超人」と呼びたいのである。「超人」の役目は、だから峻険な道を最初に踏破することである。
たとえば、わたしの尊崇する「超人」に、インドのマハトマ・ガンジーがいる。ガンジーは、「超越者」であるキリストの教えた茨の道を、みごとに踏破した人間だ。「汝の敵を愛せ!」とキリストは教えたが、敵を愛したキリスト教徒は一人もいなかった。敵を改宗させて味方にしようとしたり、異教徒を軽蔑したりしたのが、キリスト教徒である。異教徒を異教徒のままに愛せなかったのだ。
皮肉にも、キリストの愛の道を最初に踏破したのは、異教のヒンズー教徒のガンジーであった。わたしは、ガンジーこそキリスト教の「超人」だと信じている。
(以下省略・・・その後に、空海も同様に仏教の「超人」だ、と述べています。)
(ひろさちや『空海入門』(中公文庫)P.133~135より引用)
確かに、キリスト教の歴史は、
主キリストご自身が望まれていたものではなかった、といえましょう。
私自身、キリスト教の洗礼を受けたからと言って、
「自動的に」救われる、とは全然考えていません。
イエス様は、
「わたしに向かって、『主よ、主よ』と言う者が皆、
天の国に入るわけではない。
わたしの天の父の御心を行う者だけが入るのである。」
(マタイ7:21新共同訳)とおっしゃっていますね。
最終的には、信仰と、行いによって救われると考えます。
「死者たちは、(中略)彼らの行いに応じて裁かれた。」
(ヨハネ黙示録20:12新共同訳)と書いてあるとおりです。
神様の御前では、「○○教」とか、
「カトリック」とか、「バプテスト」といったレッテルではなく、
生きている間に、どれだけの愛があったかが、
問われるのだと思います。
さて、ガンジーといえば、
彼の「自伝」と、伝記映画である「ガンジー」をおすすめしたいです。
あと、先ほど長い引用をした、『空海入門』もおすすめです。
何回も読み返している本の一つです。
ガンジー自伝 (中公文庫BIBLIO20世紀)
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空海入門 (中公文庫)
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