主の祈り(その4)「み名が聖とされますように」
「主の祈り」シリーズの第4回目です。
今回は、「み名が聖とされますように」について考察します。
まず、言葉の訳について、調べてみましょう。
カトリック・聖公会共通版では、
「み名が聖とされますように」となっていますが、
正直言って、少しわかりにくい言葉だと思います。
他の日本語の口語体の訳では、どうなっているでしょうか?
手持ちの聖書で調べてみました。
「御名があがめられますように。」
(口語訳、新改訳、新共同訳、現代訳、エマオ出版訳)
「み名が聖とせられますように。」
(バルバロ訳)
「あなたの名が聖なるものとされますように。」
(岩波書店・新約聖書翻訳委員会訳)
「あなたの御名が聖とされますように。」
(回復訳)
「御名が尊まれますように。」
(フランシスコ会訳)
「(願わくは、)あなたの御名が敬われますように。」
(柳生直行訳)
「あなたの名を尊いものとしてくださいますように、」
(共同訳)
※ここへのコメントとして、共同訳には、以下のような注がついてます。
「『神が神としての栄光を表してくださいますように。』という意味。」
ちょっと煩瑣な記事になってしまいましたね。
要約すると、
「み名が聖とされますように」という表現か、
「み名があがめられ(尊まれ)ますように」の、
2つにしぼられます。
では、「聖とされますように」の、
「聖」とは、いったいどういうことなのでしょうか?
辞書の意味で、「聖なる神」といった場合の、
「聖」とは、「けがれなく、尊いこと」(広辞苑)とあります。
しかし、聖書的な意味での、「聖」とは、
手持ちの聖書事典から抜粋しますと、
「ヘブライ語の『カードーシュ』も、ギリシャ語の『ハギオス』も、
本来は、『分離する』あるいは『遮断する』という意味をもっている。
したがって、『神が聖である』と言われるとき、それは、
神の隔絶性、無比性、尊厳性、主権性・・・(中略)を指示する(中略)」
ますますわからない、ですか?・・・・
視点を変えて、「み名が聖とされますように」ということを、
身近な例で考えてみましょう。
たとえば、「○○の名を汚す」という表現がありますね。
ここで言う「名」とは、単なる「音」ではありません。
その、もの・こと・人・存在の本質をあらわします。
「名は本質を表す」は聖書的発想の重要な一つです。
これは私の解釈ですが、
「み名が聖とされますように」ということは、
「天におられるわたしたちの父」なる神様にとって、
というよりも、むしろ、
「わたしの心において、わたしたち信じる者の間において、
世の中のすべてで」、神様のお名前が、
尊敬され、あがめられ、聖なるものと認識されますように、
ということではないか、と考えます。
神様のお名前に、ふさわしい尊敬が払われ、
大いにあがめられること、
ひいては、多くの人が、そのお名前を信じること、
そうなりますように、ということではないかと、
私は考えております。
十戒の中で、
「あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。」
(旧約聖書 出エジプト記20:7、申命記5:11新共同訳)
というのがありますね。
旧約聖書においては、
「~してはならない。」という消極的な掟ですが、
新約聖書においては、むしろ積極的に、
「み名が聖とされますように。」となったのでしょう。
「主の名を呼び求める者は皆、救われる。」
(新約聖書 使徒言行録2:21新共同訳※他にもあります。)
神様の「み名」には、救いがあります。
「み名が聖とされますように」を、
もう一つ別な視点から見てみましょう。
それは、「賛美」という視点です。
「主を賛美するために民は創造された。」
(旧約聖書 詩編102:19新共同訳)とあります。
私たちは、神様のすばらしさ、きよさ、その愛を知る時、
賛美せずにはいられません。
ちょうど、ロックコンサートに来ているファンや、
あるいはスポーツ観戦の際のファン・サポーターが、
すばらしい演奏や、すばらしいプレイに、
歓声をあげずにはいられないように・・・
しかし、神様への賛美は、
それらの歓声と違って、
ただ空に消えていくものではありません。
「けれども、あなたは聖であられ、
イスラエルの賛美を住まいとしておられます。」
(旧約聖書 詩篇22:3新改訳)
「主を喜ぶことは、あなたがたの力であるから。」
(旧約聖書 ネヘミヤ記8:10新改訳の欄外別訳)
私たちの賛美の中に、神様が住んでくださるのです!
そして、それだけではなく、私たちの力となってくださるのです!
なんとすばらしい約束でしょうか。
だからこそ、私たちは、あらゆる祈りと願いに先立って、
まず神様を賛美するのです。
ちょうど、「主の祈り」のように・・・
「天におられるわたしたちの父よ、
み名が聖とされますように・・・」
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