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2015年4月 7日 (火)

マーラー:交響曲第10番聴き比べ(2)〜第1楽章「アダージョ」のみの演奏7種

マーラーの交響曲第10番、
今回は第1楽章「アダージョ」のみの演奏を取り上げます。
前回はデリック・クックによる全曲版を取り上げました。
全曲版(クック版その他)による演奏が増えて来ている一方、
国際マーラー協会では第1楽章のみを全集版として収録・出版しています。
マーラー自身のオーケストレーションに依らないからです。

第10番の全曲版各種を聴きながら、
私は西洋美術史に残る、ある作品をつい連想しました。
さて、下の写真は、ある超有名な芸術家の未完の作品です。
誰の作品だと思いますか?
(西洋美術に詳しい方ならカンタンすぎる問題ですが・・・)
もしかして、モダンアート?


250pxmichelangelo_piet_rondanini


答えは、ミケランジェロです。
「ロンダニーニのピエタ」という、
最晩年のミケランジェロがまさに倒れる直前まで制作を続けていた、
と言われる未完の作品です。
もしこれが他の芸術家の作品だったとしたら、
単に「出来損ない」で片付けられる、無価値なものだったでしょう。
しかし、ミケランジェロ作ということで、
この作品は消えない価値を持つようになりました。
(ちなみに、約20年ぐらい前、ミラノで実物を見たことがあります。
この作品を知ったのは、
ロマン・ロランの『ミケランジェロの生涯』という本によります。
残念ながら現在絶版・・・
ロマン・ロランの著作は、もはや読まれなくなっているのでしょうね。)

マーラーの第10番も、未完ながら、
まさに「ロンダニーニのピエタ」のように、
正真正銘マーラーの作品として当然認知されるべきであるし、
できれば第1楽章のみならず、
いずれかの全曲版によって鑑賞されるべき作品であると確信しています。

とはいえ、第1楽章「アダージョ」だけでも十分な美しさを持っているのも事実。
クック版その他の補筆版ではなく、
マーラー自身のオーケストレーションを重視したい、
という指揮者の主張も一理あります。
後述の、テンシュテット指揮ウィーン・フィルによる演奏のライナーノーツには、
このような文が書かれていました。

(引用)
あるとき私(注:ヘンリー・フォーゲル氏。記事の執筆者。)は彼(テンシュテット)に尋ねた。デリック・クックによるこの10番の完成版を演奏することが心によぎったことがあるかと。とてもできないと彼はいい、極めて興味深い返答なのだが、マーラーが実際作曲し校訂した冒頭のアダージョのみがこの楽章にふさわしい価値あるものなのだと答えた。
(引用終)※訳者不明。

なるほど・・・

それでは、今回取り上げる7盤を紹介します。
録音の古い順に並べます。
(なお、全曲版として演奏されたもの(前回記事)は、
今回取り上げません。
第1楽章で完結するものとして演奏するのか、
全曲版の第1楽章(スタート地点)として演奏されるかという扱いの違いは、
意外と大きいのでは、と考えるからです。)

◯バーンスタイン指揮ウィーン・フィル(1974)DG 25:57
※カップリング 交響曲第8番

◯バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィル(1975)SONY 26:28
※交響曲全集旧盤の1枚

◯テンシュテット指揮ウィーン・フィル(1982)Altus 29:52
※カップリング ベートーヴェン:交響曲第3番


◯マゼール指揮ウィーン・フィル(1985)SONY 26:16
※交響曲全集の1枚

◯アバド指揮ウィーン・フィル(1988)DG 24:25
※カップリング 交響曲第1番

◯ベルティーニ指揮ケルン放送響(1991)旧EMI 26:04
※交響曲全集の1枚

◯ブーレーズ指揮クリーヴランド管弦楽団(2010)DG 24:04
※カップリング 子供の不思議な角笛

図らずも、7枚中4枚がウィーン・フィルとなってしまいました。
それでは、順位をつけてみましょう。

1位 ベルティーニ盤
2位 マゼール盤
3位 バーンスタイン・NYP盤
4位 テンシュテット盤
5位 ブーレーズ盤
6位 アバド盤
7位 バーンスタイン・VPO盤

1〜3位はこの曲が好きならぜひ持っていた方がいいと思う盤です。
4〜7位はお好みでどうぞ、ぐらいかな・・・

ベルティーニ盤、マゼール盤はこの曲の美感を最大限まで引き出しています。
特にベルティーニ盤は、全曲版を聴いてみたい、というきっかけになった演奏です。
マーラーと妻アルマの愛憎劇が浮かんでくるような感じがします。
マゼール盤、バーンスタイン・SONY盤、テンシュテット盤は、
いずれも第1楽章だけで十分完結している、と言わんばかりの熱演です。

力演はテンシュテット盤です。
この中で最も長い時間粘っていますね。
最もドラマティックな演奏といえます。
ただ、演奏時間が短ければ「味が薄い」かというと、そうでもないのです。
あまり思い入れが乏しいアバド盤も十分な美演ですし、
ブーレーズ盤は、この曲を解剖するかのような精緻さで、
見事に作品の価値を引き出しています。

ブーレーズ盤は1度だけ聴くと素っ気ないだけに聞こえますが、
何度か聴くと作品そのものが指揮者の体臭なしに全貌を現します。
鑑賞というよりは、楽曲分析にピッタリの演奏といえます。
ただ、マーラーの「第9」の続編というよりは、
なんだかシェーンベルクの「浄夜」の一歩手前のような作品という印象も受けました。
(ブーレーズ盤はタワレコで安売りしていたので、
この際に手に入れてみました。以前なら見向きもしなかったはずですが・・・
同時に第2番、第8番のCDも入手しました。
第8番についてはそのうち書いてみたいと思います。)

バーンスタインのDG盤は、録音がぱっとしないのが残念です。
交響曲第8番のオマケと考えた方がいいと思います。
以前の私にとって、
マーラーの第10番「アダージョ」といえばこの盤だったのですが、
だからこそ、理解と共感を妨げていたのかもしれません。

ただ、どんなに第1楽章「アダージョ」が美しくても、
そこで止まらず、ぜひとも全曲版を通して聴くことに挑戦してほしいものです。

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