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2014年5月10日 (土)

映画「終着駅 トルストイ最後の旅」(原題:The Last Station)

実に痛々しい映画でした・・・
映画「終着駅 トルストイ最後の旅」(原題:The Last Station)が、
NHKBSプレミアムで2014年5月9日に放送されていたので、
録画して妻と観ました。
最晩年のトルストイの家庭の悲劇を描いた作品です。


終着駅 トルストイ最後の旅


隣人愛や人類愛を高らかに主張し、
聖者のごとき人と世界中から崇められていたトルストイが、
家庭では夫人と不仲になってしまった、というのはなんとも皮肉な話です。
(対立点は金銭に関してであって、それ以外は深く愛し合っていたことが、
映画では描かれています。)
映画では、トルストイ自身は聖者でも何でもない、
等身大の人物として描かれています。
(「サウンド・オブ・ミュージック」でトラップ大佐を演じた、
クリストファー・プラマーが名演です。)
むしろ、異常なのは、チェルトコフをはじめとするトルストイの取巻連中です。
怪しげな宗教団体そのものです。

この作品での実質上の主人公は、トルストイの秘書ワレンチンでしょう。
トルストイ主義者たちの偽善的・観念的な「愛」と、
真実で現実的な「愛」(性愛を含む)を対比させています。
トルストイが秘書ワレンチンに若い頃の情事を語るところは、
倉田百三の『出家とその弟子』で親鸞と唯円が、
恋と信仰について語りあうところを思い出しました。


出家とその弟子


トルストイの妻ソフィアは悪妻として名高いのですが、
彼女が怒り出すのも無理はないなぁ・・・と納得してしまいました。

D・カーネギーの名著『人を動かす』の一番最後の方の章、
「付録 幸福な家庭をつくる七原則」というところに、
トルストイ夫妻の悲劇が簡潔に書かれています。
(引用)
 トルストイの生涯は悲劇だった。その原因は結婚だといえる。(中略)
 (※トルストイ)は著書の印税も受け取ろうとはしなかった。そのことで、夫人は怒ったり泣いたりわめいたり、何年間もしつこく彼を責めつづけた。気に入らないことがあると、ヒステリーの発作を起し、死ぬといっておどかす。
 一九一〇年十月のある雪の夜、八十二歳のトルストイは、家庭の不和に堪えかね、あてどもなく家を出てしまったーーー十一日後、彼は、ある停車場で息を引き取った。死にぎわの願いは、夫人を絶対に近づけてくれるなということであった。
 これが、トルストイ夫人の口やかましさ、不平、ヒステリーから生まれた世にも悲惨な結末である。
 彼女にしてみれば、不平をいうだけの理由は、十分にあったのだろう。だが問題は、その不平をぶちまけることによって、彼女はどれだけの利益を得たかということだ。事態はそのために、ますます悪化したのではなかったか?

(D・カーネギー『人を動かす』(創元社)文庫版PP.334から引用終)


人を動かす


愛には偽りがあってはなりません。悪を憎み、善から離れず、 兄弟愛をもって互いに愛し、尊敬をもって互いに相手を優れた者と思いなさい。
(新約聖書ローマの信徒への手紙12:9〜10新共同訳)
人類愛より隣人愛、もっと身近な家族愛こそ、最も大切なことですね。

トルストイの最晩年のことは、高校生の時に
サマセット・モームの『世界の十大小説』のトルストイの章や、
ロマン・ロランの『トルストイの生涯』で読んでいたので、
よく知っていました。
このような形で映画化されるのは意外でした。
(どちらも今では絶版のようですね・・・岩波で出ていました。)
文学ファンなら一度は観る価値のある作品です。

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