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2014年2月14日 (金)

書評:リチャード・ニクソン著『指導者とは』[原題:Leaders](文春学藝ライブラリー)

2014年1月に、紀伊國屋書店で、
新聞広告に載っていた、山本七平著『聖書の常識』(文春学藝ライブラリー)
という本を買いました。
(こちらは紹介する値もない本でしたが・・・)
その本のすぐ横に、今回紹介します、
リチャード・ニクソン著『指導者とは』(文春学藝ライブラリー)がありました。
「ニクソンって、アメリカ元大統領の?」と思ったら、その通りでした。
私にとっては初めて名を聞く本でしたが、
ペラペラとページをめくっただけで、
実に興味深そうな本であることがすぐにわかりましたので、
ついでに買ってしまいました・・・
文庫の帯にある、「20世紀リーダー論の最高峰!」という宣伝文句は、
決してウソや誇張ではないことは、読み進めていけば納得できます。

リチャード・ニクソン著『指導者とは』(文春学藝ライブラリー)

リチャード・ニクソン(Richard Milhous Nixon 1913-1994)は、
アメリカ合衆国第37代大統領で、ウォーターゲート事件で辞任した事で知られます。
ウォーターゲート事件という汚点で、否定的なイメージが強いかもしれませんが、
ベトナム戦争での米軍撤退、ソ連とのデタント(緊張緩和)、
中華人民共和国との国交樹立など、外交面では大きな成果を挙げた人でもあります。
(米大統領として異例なことに、生涯が何度も映画化されていますね。
オペラにまでなっています。
→ジョン・アダムズ『中国のニクソン』)

(参考)
ジョン・アダムズ「中国のニクソン」(オペラ)
John Adams: Nixon in China

(参考)映画「ニクソン」

(参考)映画「フロスト☓ニクソン」


この『指導者とは』は、
米国副大統領、大統領として、世界の要人と数えきれない会談を行って、
実際に各国の指導者をよく知っているからこそ書ける、
稀にみる読み応えのある政治家評伝集です。
20世紀〜21世紀の政治家が書いた本としては、
第一級の価値がある本だと断言します。
(もう一つ挙げるとしたら、
チャーチルの『第二次世界大戦』全4巻が圧倒的な筆致です。
こちらは1953年度のノーベル文学賞を受賞しています。
私は高校生の時に読みました。)


(参考)チャーチル著『第二次世界大戦』(1)(河出文庫)


本書で取り上げられている人物は、20世紀を動かした代表的な政治家7名です。
(ただし、アメリカの指導者は入っていません。例外がマッカーサーです。)
チャーチル(英)、ドゴール(仏)、
マッカーサー(米)と吉田茂(日)、
アデナウアー(旧西独)、フルシチョフ(旧ソ連)、
周恩来(中)
(実際には、関連する人物として、
歴代の米大統領、特にアイゼンハワー大統領や、
毛沢東、ブレジネフ、ローマ教皇や中東・アフリカの指導者まで、
記事の大小はあるものの、様々な各国指導者が言及されています。)

どの章も読み応えがあり、ヘタな小説より何十倍も興味深いものがあります。
中でも深い感銘を受けたのが、ドゴールと、
マッカーサーと吉田茂の章です。
筆致に迫力があるのは、フルシチョフの章です。
(眼前でフルシチョフが悪態をついているのが、
まざまざと見えてきそうなほどです・・・)
ニクソン自身、フルシチョフと有名な「キッチン討論」を戦わせた本人です。
5時間にも渡るフルシチョフの激しい演説と、それに対する応戦・・・
フルシチョフの醜悪さを鮮烈に描きつつ、
なおかつ政治指導者としての長所を描くところを忘れてはいません。
その度量の広さも本書の魅力の一つです。

(PP.467「訳者あとがき」から引用)
 外国の政治家の手になるこの種の本を読むたびに私が思うのは、なぜ日本人の政治家には書けないのかということである。現時点で日本には数人の元首相がいるが、中曽根康弘氏を唯一の例外として、われわれの参考になるようなことを書いた人は少ない。書けばせいぜい、「実はこうだった」式の回想である。それは内政の問題点が主に料亭で解決され、外交ではイニシャチブをとることなく、万事について官僚が政治家の一挙手一投足にまで犬馬の労をとって演出するため、書くことがないからだろうか。
 チャーチルほど浩瀚なものを書き残せとは言わないが、せめて日本的指導者像を説明する努力くらいはしてほしいと、訳者は一抹の寂しさを覚えるのである。

(引用終)

本書の訳者の徳岡孝夫氏が、
「訳者あとがき」の最後にに書いてあるのは、
まさにその通りだなと思いました。
ニクソンのような幅広い視点で世界政治を見ることができるのは、
貴重な財産です。
他方、我が国の元首相といえば・・・
東京都知事選に出馬したH氏とバックボーンのK氏のような、
晩節を汚すような涸れないジジイがいるかと思えば、
(私自身は反原発ですが、
東京都知事選の争点にすべき問題ではなかったと選挙前から思っていました。)
民主党のH氏のように、「友愛」を掲げるノー天気の売国奴など、
恥ずかしい面々が多いのは残念です。
(存命・政治家引退の方では、中曽根康弘氏は唯一例外的に尊敬に値しますね。)

政治家評伝としてだけではなく、
原題の"Leader"、邦題の『指導者とは』という観点から、
第一級のビジネス書としても使えるのでは、と思います。
特に最終章「指導者の資格について」は、リーダー論として卓越しています。
ぜひご一読を!

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