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2013年7月 3日 (水)

書評:松本佐保著『バチカン近現代史〜ローマ教皇たちの「近代」との格闘〜』(中公新書)

2013年7月3日のニュースで、
2代前のローマ教皇、故ヨハネ・パウロ2世が、
年内にも聖人に認定される、という報道がありました。
故ヨハネ・パウロ2世が年内にも聖人に、法王庁が認定
(AFP=時事 7月3日(水)15時2分配信)

記事によると、
(引用)
【AFP=時事】カトリック教会の列聖の認定手続きを担当するバチカン(ローマ法王庁、Vatican)の列聖省(Congregation for the Causes of Saints)は3日、2世代前の法王であるポーランド出身の故ヨハネ・パウロ2世(John Paul II)による2つ目の「奇跡」を認定した。これにより、ヨハネ・パウロ2世の列聖には現法王フランシスコの署名を必要とするのみとなった。伊ANSA通信が2日に伝えた。(中略)

 ヨハネ・パウロ2世の列聖は12月までに正式決定し、年内にも列聖式が行われる見通しだ。

 聖人と認められるには、その人物が起こした2つの奇跡が認定される必要がある。ヨハネ・パウロ2世は、2005年の死去からわずか6か月後に1つ目の奇跡が認められ「福者」となっている。

 福者となったのは、フランス人の修道女、マリ・シモンピエール(Marie Simon-Pierre)さんが故ヨハネ・パウロ2世による「とりなし」を求めて祈ったところ、パーキンソン病が治癒したことが奇跡と認められたため。治癒の理由は医学的には説明がつかないという。

 2つめの奇跡が起きたのは2011年5月1日。バチカンのサンピエトロ広場(St Peters' Square)でヨハネ・パウロ2世の列福式の当日、コスタリカ出身の女性が、病気から突然回復したという。正式に「奇跡」と認定されるためには、こうした病からの回復が瞬間的かつ永続的で、医学的に説明が付かないものでなくてはならない。
(引用終)

どうして故人に「とりなし」を願おうとするのか、私には理解できませんが、
(祈るべきはただ真の創造主のみです!)
それはともかくとして、故ヨハネ・パウロ2世の「奇跡」は、
病気の癒しとかの、ちっぽけな(当事者にとっては別ですが)ものではありません。
その「奇跡」とは?

松本佐保著『バチカン近現代史〜ローマ教皇たちの「近代」との格闘〜』(中公新書)
という本を新聞広告で見かけ、早速買って読みました。

バチカン近現代史〜ローマ教皇たちの「近代」との格闘〜

ローマ教皇の創始から17世紀まで軽く序章で触れられた後、
フランス革命の時代を経て、
「第1バチカン公会議」を開き、
「教皇不可謬説」、「聖母マリアの無原罪の御宿り」という、
カトリックの2大トンデモ教義を定めた教皇、
ピウス9世(在位1846〜1878)を大きく取り上げ、
その後の教皇とその業績をすべて取り上げています。
(著者はピウス9世にとても興味があったそうです。)

行き過ぎた工業化や資本主義の弊害を警告した回勅、
「レールム・ノヴァールム」を発したレオ13世(在位1878〜1903)、
ムッソリーニ、ヒトラーとバチカンの関係、
特に「ヒトラーの教皇」とさえ言われ、
第2次世界大戦後は反共産主義に立ったピウス12世(在位1939〜1958)の働きなど、
政治史として読み応えがありました。

ヨハネス23世(在位1958〜1963)と、
パウロ6世(在位1963〜1978)によって進められたすばらしい改革となった、
第2バチカン公会議についても1章が割かれています。
(この公会議については、大いに評価されるべきものだと考えます。)

そして先ほど触れた、ヨハネ・パウロ2世(在位1978〜2005)の時代。
「奇跡」とは、共産主義圏の崩壊です!
聖書の言葉を借りれば、
わたしたちは、あなたのために
一日中死にさらされ、
屠られる羊のように見られている

(新約聖書ローマの信徒への手紙8:36新共同訳→元は詩編44:23)
ような、共産主義の暴虐の下では、
弾圧・投獄・処刑の対象とされ、非力な存在のキリスト教会が、
ヨハネ・パウロ2世というカリスマ的指導者を得て、
ポーランドから始まってついには共産主義大国、
ソビエト連邦を崩壊させるまでの過程が本書の白眉といえるところです。

冷戦後のヨハネ・パウロ2世の活躍にも1章が割かれています。
前教皇ベネディクト16世(在位2005〜2013)については数ページだけでした。
(確かにその程度で十分かも・・・)
新教皇フランシスコの登場でバチカンの近現代史が締めくくられています。

カトリック信徒にはもちろんのこと、
キリスト教全般、ヨーロッパ史に興味がある人にはオススメです。
著者は「私自身はカトリック信者ではないが」(本書P.247)と書いてありますので、
擁護も断罪もしない、公平な立場でバチカンの政治史を書いています。
私にとっては小説並の知的面白さがありました。

だれが、キリストの愛からわたしたちを引き離すことができましょう。
艱難か。苦しみか。迫害か。飢えか。裸か。危険か。剣か。
「わたしたちは、あなたのために
一日中死にさらされ、屠られる羊のように見られている」
と書いてあるとおりです。
しかし、これらすべてのことにおいて、わたしたちは、
わたしたちを愛してくださる方によって輝かしい勝利を収めています。

(新約聖書ローマの信徒への手紙8:35〜37新共同訳)

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