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2012年10月15日 (月)

書評:烏賀谷弘道著『報道の脳死』(新潮新書)~日本のマスコミの病理解剖

2012年度のノーベル医学生理学賞山中伸弥教授に決まり、
日本中が喜びましたが、
例の「iPS細胞で世界最初の手術を行った」とするM氏のニュースは、
報道の信用を大いに失墜させましたね。
読売新聞は調査能力がない、というのが露呈したわけです。
便乗ニュースでスクープ!と焦った結果の大虚報でした。
しかしこういう事例は、果たして読売新聞だけに見られるのでしょうか?
答えはNo!ですね。
昨年の原発事故における報道を見れば、
どの新聞・テレビも「ただちに健康に影響がない」という大ウソをタレ流していました。
「どうして?」と問うことすらせず・・・

今回紹介する、烏賀谷弘道著『報道の脳死』(新潮新書)は、
日本の既存メディア(新聞・テレビ及び記者クラブ)の病巣を見事に暴き、
もはや「脳死」状態である、と宣告しています。
原発事故報道におけるお粗末な報道状況になったのは、
未曾有の大災害だからではなく、むしろ慢性的な原因にある、と著者は分析しています。

報道の脳死 (新潮新書)


(引用)
 ずっと新聞社にいた私にはよくわかりました。3.11報道が見せた報道の不能ぶりは、私が大学を卒業して新聞記者になった26年前からずっと指摘され、解決が急がれていた問題に起因するものばかりでした。26年間待てば十分でしょう。26年も問題を解決できない組織は、いつまで待っても問題を解決することはできないのです。「自己修復能力」や「自浄能力」がないのです。
 また3.11という戦争級の危機が来ても不能のままの報道は、本当に戦争が起きても不能のままでしょう。あらゆる意味で3.11は国家が想定しうる最烈度のクライシスであり、3.11で見せた報道のありようこそが、日本の新聞社やテレビ局が持つ「自己ベスト記録」「最大限がんばった実力」なのです。つまり彼らは揃いも揃って「実力テスト」に落第したのです。
 「報道の脳死宣言」をする時が来た。私はそう考えます。
(中略)
 3.11はそんな私の認識を一変させました。そして改めて現場に足を運び、取材を重ねるにつれ「この国の報道のありようは、この国の民主主義の欠陥の大きなピースなのではないか」と思うようになったのです。報道とはつまり「国民の知る権利の代行者」であり「市民を権力から自由にするための情報を運ぶ仕事」だと私は考えます。この国の「報道の不能」は「民主主義の不能」の一部でもある。この本では、報道の不能を端緒に、この国の民主主義の危機を考えたいのです。
(本書P.9~12から引用)

その具体例として、第1章では、
新聞の常套手段である「パクリ記事」や、
「セレモニー記事」、「カレンダー記事」(「あれから○○年」のたぐい)、
「えくぼ記事」(微笑ましいエピソードを写真付きで掲載)、
「観光客記事」(当事者の視点ではなく、訪問者としての視点で書かれた記事)の手法を、
実に鮮やかに暴いてみせます。
安易な記事作りの手法が、ジャーナリズムの「筋肉」を鈍らせ、
あの原発事故報道における「報道の多様性の欠如」につながったのだ、と
著者は喝破します。(⇒P.100~102)

第2章では、日本のマスコミに「クエスチョニングの欠如」がある、と指摘します。
表面からは見えない真実あるいは本質を探ること」(P.103)が「クエスチョニング」です。
ジャーナリズムの基本中の基本がおろそかにされた結果が、
原発事故の「大本営発表」(=政府の報道タレ流し)になったわけです。
クエスチョニングがされないまま報道されたものとして、
他に「計画停電」とか「計画的避難区域」なども挙げています。
新聞社組織の断片化、セクショナリズム、夕刊の発刊等が原因である、と論じています。

第4、5章では、これからの報道のあり方、あるべき報道の姿が論じられています。
大いに参考になります。

ところで、冒頭に挙げたiPS細胞で世界初手術云々・・・のM氏ですが、
昨日(10月14日)なにげなくテレビをつけていると、
Mr.サンデーという番組で、様々なプライベート事情が暴かれていました。
まるで犯罪者扱いでした。
確かに、虚言をついたのは問題ですが、本来最も責任が重いのは、
ウソを見抜けなかった、見抜こうとしなかった読売新聞他のマスゴミです。
その非を責めずに、プライベートを暴いて社会的なリンチに晒す報道の姿・・・
ゾンビが生者に襲いかかるかのようです・・・

北斗の拳」のケンシロウの決めゼリフは、
お前はもう死んでいる」ですね。
日本の報道は「脳死」状態です。
今こそメディアリテラシーが必要な時代です。
本書を通して、報道の常套手段と病巣を知るのが、
自己防衛のためにも必要ですね。

なお、同じ著者の『カラオケ秘史―創意工夫の世界革命』(新潮新書)もオススメです。
(実は機会があってこの本を読んでから、『報道の脳死』を読みました。)
非常にオモシロイ本ですよ。

カラオケ秘史―創意工夫の世界革命 (新潮新書)

(追記)
本文冒頭の参考記事です。
iPS細胞にまつわる謎の事件- ゲンダイネット(2012年10月16日10時00分)

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