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2012年8月 8日 (水)

消費税増税・内閣不信任案をめぐる8紙の社説~国民の声の代弁者か、政府の代弁者か?

2012年8月8日の新聞各紙の社説では、
消費税増税法案採決と内閣不信任案をめぐる、
民主党と自民党の駆け引きについて、
一斉に論じていましたので、読み比べてみました。
対象は、読売、朝日、毎日、産経、赤旗、北海道新聞(道新)、東京新聞です。
なお、日経では、8月7日の社説で論じていますので、
これも比較考慮します。

各紙の社説見出しと記事リンク先(朝日は除く)を列挙します。

読売:内閣不信任案 一体改革を党利党略で弄ぶな
朝日:民・自対立―3党合意に立ちかえれ
毎日:混迷する国会 政争の愚を党首は悟れ
産経:【主張】野田首相 政治生命かけ解散決めよ 問責前に党首会談で打開を
日経:最優先すべきは消費増税法案の成立だ

道新:内閣不信任案 行き詰まった増税路線
東京:消費税増税法案 国民に信を問う潮時だ
赤旗:一体“改悪”法案 これで採決とはとんでもない

読売、朝日、毎日、日経は「解散よりも消費税増税法案成立を!」と、
まるで政府の代弁者となっています。
奇妙なことに、この4紙の社説はどれも、「国民」の立場は全然考慮されていません。
国民との約束である「マニフェスト」よりも、3党合意の方が大事みたいですね・・・
(自民党の谷垣総裁は、
将棋でいえば王手飛車取りぐらいの手がいくらでも打てるのに、
目が節穴のようです・・・
谷垣氏が自民党総裁である限り、私は自民党を支持することはできません。)
産経は、同じく消費税増税法案成立を主張しつつも、
法案成立後の解散総選挙にも言及しています。
この中では、かつての人権派・朝日の変節ぶりは目に余りますね。

私が一番まともだと思った社説は、東京新聞のですので、引用します。
(引用)
 内閣不信任決議案と首相問責決議案が提出された。民主党マニフェストに違反する消費税増税の強行は許されない。野田佳彦首相にとって衆院を解散して国民に信を問う潮時ではないのか。
 不信任決議案と問責決議案を提出したのは自民、公明両党以外の野党各党だ。提案理由を「消費税増税は民主党の公約違反で、国民の声に背く野田内閣は信任に値しない」とする。
 不信任決議案はいまのところ否決される公算が大きいが、問責決議は可決される可能性がある。決議には法的拘束力はないものの、可決されればすべての国会審議が止まる。首相は重く受け止めるべきだ。
 消費税を増税する社会保障と税の「一体」改革法案は、二〇〇九年衆院選の民主党マニフェストに反する。盛り込まれておらず、消費税増税はしないと公約して政権に就いたのではなかったか。
 消費税増税に転換するのなら、衆院を解散して国民にその是非を問うのが筋だ。公約違反と理解しながら強行するのは、国民に対するだまし討ちと言ってもよい。自民党は首相が衆院解散を確約しなければ、ほかの野党とは別に不信任決議案と問責決議案を独自に提出するという。野田内閣の支持率が低迷するうちに衆院選に持ち込んだ方が党勢拡大が見込めると踏んだのだろう。
 しかし、消費税増税という民主党のマニフェスト違反に加担しながら、解散の確約がなければ「一体」改革法案の成立に協力しないというのは理解しがたい。
 社会保障改革を先送りし、政府や国会の無駄にも切り込まず、消費税だけが増税される、名ばかりの「一体」改革法案は本来、成立させるべきではない。
 とはいえ、国民の生活に大きな影響を与える消費税増税を衆院解散の取引材料にしてもよいのか。自民党の対応は、党利党略との批判を免れないのではないか。
 国権の最高機関であり、唯一の立法機関である国会の仕事は、法律をつくり、国民の生活のために政策を実現することだ。
 しかし、歳入の四割を占める赤字国債発行のための特例公債法案や、衆院「一票の格差」是正など緊急を要する案件も手付かずだ。そんな状況で、与野党は責任を果たしたと胸を張れるのだろうか。
 消費税増税前にやるべき改革、処理すべき案件は数多くある。それをやろうとしない首相にはもはや政権を委ねることはできない。

(引用終)

道新では、ご都合主義の自民党・公明党に対して辛辣な意見が書かれています。
(引用)
 自民党は「一体改革」では首相に協力する姿勢を見せながら、内閣不信任案の提出を模索している。

 国民に不人気な消費税増税は民主党政権にやらせたい。一方で今国会中に野田政権を衆院解散・総選挙に追い込めなければ谷垣禎一総裁の続投が危うい。そんな思惑がある。

 解散と増税の両方を同時に追求するのは虫のいい話だ。首相に不信任案を突きつけるなら、まず3党合意を破棄してからやるべきだ。

 公明党は3党合意の直前まで「社会保障の将来像が見えない」と政府・与党を批判していた。将来像がいまなお見えないまま関連法案の成立を目指してきたが、与党へのすりよりと見られても仕方ないだろう。

 理念が異なるにもかかわらず、数合わせで手を握った3党の協力体制にはもともと無理があった。政策の本質論議をやり直すことが肝要だ。
(引用終)

かつては共産党といえば、反対だけの党でしたが、
今や一番まともな政党なのでは、と思えるほどです。
(私は共産主義には否定的ですが、
政党としての日本共産党には、最近では共感を覚えています。)
日本共産党は、そもそも消費税という存在そのものに、
以前から反対ですね。
そこはさておき・・・
赤旗の社説からも引用します。
(引用)
 「財政再建の手段として消費税増税は適切でない」「税の正義に反する。税制にいっそう深刻なゆがみをもたらす」―。特別委員会の中央公聴会で、財政や経済の研究者から続出した消費税増税の不当性を強調する意見です。

 東京大学の醍醐聰名誉教授は、衆院段階での民自公3党の「修正」で、増税によって余裕が生まれた財源を公共事業費など社会保障以外に充てる条文が盛り込まれたことについて、「国民に対する信義にもとる」と痛烈に批判しました。消費税増税は「社会保障のため」という口実を根本から覆すものだからです。

 駒沢大学の飯田泰之准教授は、消費税の引き上げによる増税は日本の経済成長を妨げ、景気にも否定的な影響を与え、財政再建という「所期の目的は達成できない」と強調しました。スリーネーションズリサーチの植草一秀代表取締役も、日本経済が縮小するなかで消費税増税による負の影響は重大だと、巨額増税に強く反対を表明しました。いずれも消費税増税はいまおこなうべきではないという意見です。

 公聴会は、法案について幅広く国民の意見を聞く場です。とりわけ予算や税金の問題では財政民主主義のうえからも開催が義務付けられています。公聴会で消費税増税導入の問題点を根本から問う意見が次々と表明されているのに、開きさえすれば採決の条件が整ったと法案採決へ突き進む野田政権の態度は、民主主義のうえからも重大といわなければなりません。

 消費税増税はもともと総選挙での公約を踏みにじった野田政権の暴走です。消費税増税は所得の少ない人ほど負担が重く、暮らしも景気も破壊します。特別委員会が1日に栃木、愛知の両県で開いた地方公聴会でも、中小企業団体役員から「(価格転嫁できないことは)個人商店が残れない構造的問題」と不安と怒りの意見が相次ぎました。

 マスメディアの世論調査でも半数以上が増税に反対し、「今国会での成立反対」は6割を超えています。成立強行は、国民世論に真っ向から背く暴挙です。野田政権は成立を断念すべきです。
(引用終)

以上、各紙の社説の傾向を列記してみました。
いったいどれが、本当の意味での国民の声でしょうか?
(私としては、消費税増税には反対ですし、
どうしても増税すべき、というなら、解散総選挙をして国民の信を確かめてから、
増税法案を成立させるのが筋だと考えます。
今の状態での法案成立は、
国会議員になれればどんなにウソをついてもいい、という道義的に許されないものです。)
増税やむなし、という財務省の詭弁に、見事にダマされてはならないのです!
また、政治の信頼、という面からでも、
約束を公然と破るようなことが正義なのでしょうか?
民主党は国民のマニフェストを守るべきであり、
守れないなら、解散総選挙をするのが筋です。
ウソツキや詐欺師を国会議事堂に立たせ続けてはならないのです!
新聞は何も反権力になる必要はありませんが、
政府の犬になりさがってはいけないのです。
マスメディア=第4の権力⇒権力をチェックする権力、
という自らの使命を放棄したような姿勢はどこへ行ったのでしょうか?
(関連おすすめ記事⇒メディアは本当に「第四の権力」なのか

(2012年8月27日追記)
消費増税を新聞はどう報じたか。全国紙と地方紙で鮮明な違い
篠田博之の「メディアウオッチ」2012年8月18日記事)
という記事を読みました。
消費税をめぐる全国紙と地方紙の社説の差について論じています。
その記事の締めくくりには、次のような一文が・・・
(引用)
以前もブログに書いたが、遠い将来、消費税をどうすべきかという議論はあってよい。しかし、いまジャーナリズムがやるべきことは、その民意を無視した法案の通し方や、民主党の変節のひどさを批判することではないか。これだけ「主権在民」の理念が踏みにじられているのに、それを「決められない政治からの脱却」などと賛美するのは、政治と同じくらい新聞が堕落したことの象徴ではないだろうか。昨年の原発報道では、政治に対する不信がマスコミへの不信に直結していったのだが、最近の大手マスコミのひどさには、本当にため息が出る思いだ。
(引用終)

まったく同感です。

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