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2011年2月26日 (土)

立ち読み日記~『こうすれば日本も学力世界一 フィンランドから本物の教育を考える』(朝日選書)

フィンランド教育のところは興味深いかもしれませんが、
結論的な箇所にはかなり違和感がありました・・・

書店の新書コーナーを歩いていると、
こうすれば日本も学力世界一 フィンランドから本物の教育を考える』(朝日選書)
という本が目につきました。
さっそく手にとり、パラパラと読んでみました。
著者は福田誠治氏です。
2011年2月10日初版、とのこと。



フィンランドの教育はいかにすばらしいか、
対して日本の教育はいかに子供を抑圧するダメな教育か、というのが書かれているようです。
同じ著者は、『競争やめたら学力世界一―フィンランド教育の成功 』(朝日選書)という本も書いていますね。
こちらはAmazonでも17件(2月25日現在)のレビューが書かれています。



表題の本に戻りましょう。
読み進めていくうちに、なんとなく違和感を感じ始めました。
決定的だったのは、長野県伊那市の伊那小学校の実践を絶賛していることでした。
伊那小学校は、古くから総合学習に取り組んだり、通知票を廃止したりするなど、
ユニークな実践で全国的に知られているところです。
NHKのクローズアップ現代でも、6年前に取り上げられています(私はその回は観ていませんが・・・)。
http://cgi4.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail.cgi?content_id=2141
総合学習として、ヤギの飼育を通して、算数などを教えるそうです。

伊那小学校の名は、TOSS代表の向山洋一氏の著作、
教え方のプロ・向山洋一全集 78 ”教えないから分かる”向山型算数』(明治図書)
の中で初めて知りました。
「こんなヘンな学校があるんだ・・・」と絶句した、強烈に印象に残ったところです。
向山氏が、NHKでの総合的学習と基礎学力についての番組に出演した際、
TOSSの取組とバランスをとるために、伊那小学校の実践も放映されたそうです。



向山氏の著作から抜粋します。
「・・・しかし、最後は、バランスをとって長野県の伊那小の紹介。
ヤギを飼う子どもたちの様子が映された。
方針、計画に、まる2ヶ月もかけるという。
その間、教科書の勉強もしない。
そして、ヤギを飼う上で問題となったことを話し合う算数の授業。
これで学力がつくという。
何をやっているのか!と怒りが込み上げる。障害を持った子、グレーゾーンの子は、全くついていけないだろう。

(中略)私は、インターネットを活用して、伊那小の教育を調べた。
保護者は、「学力については、学校をあてにしない。塾にやっている。」という。
(中略)
長野県の教師100人に聞いた。
伊那小は「基礎学力をきちんとつけている」と証言した教師はゼロだった。
(中略)
伊那小のような教育があってもいい。しかし、それは「学力低下」をもたらすことを覚悟の上で、やることなのだと思う。
(前掲書P.54~56より引用)

私も、伊那小のような教育実践があってもいいと考えますが、
それを全国一律に適用せよ、と主張されたら、断固反対しますね。
「はいまわる経験主義」・・・
戦後の混乱期に、アメリカの経験主義教育を取り入れたものの、
低学力という批判を受けて、あえなく一時消え去ったものです。

算数・数学というものは、人類の英知の結晶であり、単なる思い付きではありません。
そういう精神遺産を、「子供の必然性」という、
いかにももっとらしいものに限定する必要があるのでしょうか?
例えて言えば、東京から福岡まで、新幹線や飛行機があるのに、
「実力がつかない」といって、わざわざ徒歩で行かせるようなものです。
大事なのは、福岡にたどり着いたという「結果」であって、
どういう手段かは、「世間」は問いませんね・・・

正当な競争も否定し、経験から学ぶ・・・
いわゆる「オルタナティブ教育」をありがたがる人たちにとっては、
「福音」なのかもしれませんが・・・
そういうような教育を、「日本の教育の未来像」として提示する、
こうすれば日本も学力世界一 フィンランドから本物の教育を考える』。
教育上のユートピア論でしかないものです。
言うなれば、シュタイナー教育を日本全国に導入せよ、というレベルと同格といえます。

同じ著者の『競争やめたら学力世界一―フィンランド教育の成功』 (朝日選書)への、
Amazonのレビューの中に、実に痛烈なものがありました。
「(見出し)しょせん朝日
(本文)書名の段階で矛盾している本というのは初めて見ました(笑)
国同士なら「競争」してもOKなんですか?

著者は、イギリスの例を出して、競走の弊害を説いているようですが・・・
自信がない日本人を揺さぶるには、格好の材料というわけですね・・・

ところで、PISAの学力テストで気づいたことがあります。
フィンランドは、PISAテストの成績がいいから、フィンランド教育を日本に導入せよ、
というのが、教育学者や教師の主張です。
しかし、2009年のPISAテストで最も素晴らしい成績だったのは、
フィンランドではなく、中国の上海です。
また、シンガポールや韓国、香港もフィンランドをしのぐ成績がありましたね。
にもかかわらず、テレビの評論家や、教育学者などは、
「上海に学べ」とか、「シンガポールや韓国、香港に学べ」とは言いませんね。
アジア蔑視、差別のようなものではないでしょうか?
「洋モノ」をありがたがる悪い癖です。
「学力世界一」を本気で目指したいなら、フィンランドではなく、
上海の教育に学ぶのが、筋ではないでしょうか?

フィンランドの教育は確かに素晴らしいとは思いますが、
全面的に日本に導入するのは無理だと思います。
(日本が本格的に「教育立国」を目指すなら別でしょうけど・・・)
それよりも、80年代ぐらいまでの日本の教育を再評価し、
基礎の徹底を図った方が、より学力向上につながるのではないでしょうか。
アジア諸国の学力向上は、実は日本のかつてのやり方を取り入れたもののようです。
もっと自国の教育に自信をもった方がいいのではないでしょうか?

私はフィンランドの教育がおかしいとか主張するつもりはまったくありません。
しかし、フィンランドの教育をダシにして、総合的学習をもっと推進せよ、とか、
競争はおかしい、というような主張に対しては、懐疑的です。

PISAテストと福田誠治氏について、興味深いブログ記事を見つけました。
wakeiさんという方が書いた、「PISAのモデルはフィンランドよりドイツ
http://wakei.at.webry.info/200905/article_4.html

核心となる箇所を引用します。
フィンランド教育の紹介者として第一人者の地位を築いた福田誠治氏は、フィンランドが競争のない教育を行い、子どもの自発的な学習を重視しているから、学力世界一になった、競争主義を導入・強化しているイギリスは低い地位に甘んじているとして、競争主義を軸とした分析をしている。もちろん、それだけの単純な見解ではないが。
 しかし、競争主義だと学力が伸びないというのは、PISAの上位の国家を見る限りは、とてもそういうことはいえない。韓国や香港など、競争的な教育の地域が上位に入っており、日本もその中に含まれる。そして、競争主義的でない国家で下位の国も少なくない。フィンランドが競争主義的ではない教育をやって一位になっているからといって、競争主義でないから学力上位だというのは、かなり無理があるといわざるをえない。

フィンランドの隣国スウェーデンや、ドイツの事について、興味深い視点の分析は、
見事だと思いました。ぜひ記事そのものをお読みください。

義務教育は、奇をてらったものよりも、読み書き計算がしっかりと身につけば、
十分ではないでしょうか。
それさえ身についていないから問題なわけです。
(かけ算ができない大学生・・・)

頭のいい人は、そうでない人のことをあまり考えていません。
大学の教育学者サン達は特にそういう傾向が強いのでは?
小学校で背伸びして大学的な授業(問題解決型)をするよりも、
小学校には小学校にふさわしい教え方というものがあるはずです。
教科書をきちんと活用する教育が、基準ではないでしょうか?

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