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2010年8月27日 (金)

書評:田原総一朗著『緊急提言!デジタル教育は日本を滅ぼす』(ポプラ社)

題名につられて買ってしまいました。大失敗・・・
教育工学について調べる必要があり、
今月上旬(中旬?)にこの本の新聞広告が大きく出ていたときから、
かなり期待していたものです。
ソフトバンク社長の孫正義氏らが推進する
「デジタル教科書」の問題が大きく取り上げられていると思ったのですが・・・
しかし、題名にある「デジタル教育」は、本の最初と最後にちょっと出てくるだけ。
題名と中身がまったく乖離しています。
羊頭狗肉、針小棒大、泰山鳴動鼠一匹、といったところでしょうか。
そういう意味で、タイトルから期待して購入すると、失望します。

著者の教育観にも疑問を持ちました。
私は教育の基本はコミュニケーションではないかとの思いを持っている。」(P.28から引用)
確かに、コミュニケーション能力は、学校においても重要です。
しかし、学校の教育はそれだけでしょうか。
掛け算の九九とか、漢字の読み書きといった基礎・基本のことは、
この本では触れられていません。
学力低下の問題は看過されています。
『正解』と『間違い』だけを教えるのなら、学校はいらない。」(P.48見出し)
確かにおっしゃるとおりかもしれませんが・・・
著者は頭がいい人だから、そんなことは当たり前すぎて、
問題にならないのでしょうね。
現実の複雑な問題を解くヒントは、基礎・基本の積み重ねにあります。
読み書き計算という基礎・基本抜きで、「問題解決」ばかりやろうとするのは、
水泳で25m泳げない子に、いきなりドーバー海峡を泳いで渡れ、というようなものです。

あと、隂山英男氏の有名な「百ます計算」や、
藤原和博氏の「よのなか科」を手放しで賞賛して、
「日本のあるべき教育像」のように紹介しているところは、
教育観の底の浅さを感じました。
(もちろん、これらの教育実践は、ある程度評価されるべきものです。
ただ、これを全国一斉にやれるかどうか、やっていいか、というのは、話が別です。)

あえて、この本でよいところをさがせば・・・
中曽根首相(当時)から始まった臨教審から、
ゆとり教育の導入までの政治史を概観できるところでしょうか。
小渕首相(当時)や寺脇研氏、
隂山英男氏へ直接話を聞いているところも貴重な資料です。
日本の教育費がかかりすぎることについても触れているところは評価できます。

この本、「田原総一朗、教育を語る」とか、
「田原総一朗の教育論」といったタイトルなら、
中身にもある程度まで納得できたかもしれません。
(たぶん、買わなかったと思いますが・・・)
著者が説く、コミュニケーションの重要性と、
携帯の発達で退化しつつある若者のコミュニケーション能力低下を危惧するところは、
読む価値があります。

私はデジタル教科書の早急な導入には反対です。
モデル校で十分な検証をした上で、
紙媒体(教科書とノート、筆記具)と同等か、それ以上の学習効果があるなら、
国家プロジェクトとして導入してもいいかもしれませんが・・・
手は第二の脳である、とよく言われます。
子供達の健全な脳の発達には、電子機器よりも、
アナログな紙と鉛筆の方がいいと考えます。
そろばんももっと見直されるべきです。

この記事を書く前に、
他の人でこの本についてブログ記事や書評を書いていないか調べると、
マンガ家・小説家のすがやみつる氏(「ゲームセンターあらし」で有名)が、
8月27日付で記事を書いているのを見つけました。
(「すがやみつる ブログ」で検索してみてください。)

本論から話がずれますが、すがやみつる氏は、
50歳すぎてから、早稲田大学に入学し、現在、大学院在籍中なのですね。
学ぶ意志があれば、何歳からでも学び直すことができるという良い見本ですね。

緊急提言! デジタル教育は日本を滅ぼす

緊急提言! デジタル教育は日本を滅ぼす

著者:田原総一朗

緊急提言! デジタル教育は日本を滅ぼす

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